アメリカ映画を楽しみながら交渉のヒントを探る「映画に見る交渉術」のコーナーにようこそ！
皆さんは誰かと話をしているとき、「この人、今、上の空だな」「なんだか、すごく楽しそう」「きつそうだけど、大丈夫かな」などと感じたことはありませんか？
実は、この「相手の気持ちを感じること」こそ、交渉を始めるときに押さえておくべきとても大切な要素なのです。人はいつも本音を口にするとは限りません。しかし、人の体はさまざまなシグナルを通じて心の様子を表現しています。つまり、相手を知る手がかりは、あなたの目の前にあるということなのです。

今回は「相手の気持ちを感じる」をテーマに、コメディー映画「フォーチュン・クッキー」（原題： Freaky Friday）から台詞をご紹介します。

--------------------------------------------------------------------------------------------

“I don’t know what’s going on here.　 　　「ぼくには何が起きているのか、
　I don’t know what this whole thing is.　 　一体何がどうなっているのかわからない。
　I just, I feel like I know you.”　　　 　（だけど）君を知っているような気がする」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（byジェイク）

---「フォーチュン・クッキー」２００４年日本公開

--------------------------------------------------------------------------------------------

母テス（ジェイミー・リー・カーティス）は、再婚を目前に控えて大忙しの精神科医。娘のアンナ（リンジー・ローハン）は、母の再婚に反発する１５歳の高校生。
母の結婚式２日前の大喧嘩をきっかけに、そんな二人の体が入れ替わってしまいます。母と娘はやむなくお互いの姿で生活を始めるのですが…。タイミングの悪いことに、アンナは同じ高校に通う憧れの男の子ジェイク（チャド・マイケル・マーレイ）と共通の趣味であるロック音楽を通じて仲良くなり始めたばかり。ご紹介した台詞は、ジェイクが母親の姿になってしまったアンナと偶然カフェで再会し、思わず口にした言葉です。

アンナは自分が４０代の母親の姿をしていることを忘れ、ジェイクと無邪気に語り合い、一緒に歌を口ずさみます。（アンナは、母テスのクレジットカードを使って流行のファッションやヘアスタイルでテスを「ファンキーで素敵な女性」へと変身させています）４０代の女性と高校生の男の子が楽しそうに語り合う、可愛いらしくもあり、見ているほうが気恥ずかしくもなるシーンです。
しかし、「ジェイクと大好きなロックの話ができて楽しい」という１５歳のアンナの素直な気持ちがテスの姿を通じてあふれ出していたからこそ、ジェイクは「君を知っている」と感じたのです。

気持ちはいつも体を通じて表現されています。緊張すると周りの人にその緊張が伝わるのと同じように、心の動きは、目の輝きに、手の動きに、姿勢に、自然と表れてしまうものなのです。その気持ちを素直にキャッチしましょう。相手の心を読み取ろうとする必要はありません。あなたは、ただ体をリラックスさせて相手に意識を向けるだけでＯＫなのです。そこで感じたことをベースに、自分はどう行動するべきなのか、いま何を言えば良いのか、を考えてみて下さい。言葉やデータで相手の意図を確認するのは、それからでも遅くはありません。交渉が上手い営業マンたちは、この「言葉では表現されない」相手の体から発せられるものを見事に感じとったり、逆に自身の体から発したりすることが非常に上手いのです。